«月夜の名探偵ツキヨさん☆»登場人物・第一話・第二話 第三話~第六話前編へ 第六話後編へ 研究室ふたたびへここは、胡難市。 (「胡蝶蘭の胡 無理難題の難」) ごく普通のマンションに、一軒の、ごく普通のサラリーマン家庭がありました。 一家は4人家族。 優しくて働き者のお父さんと、 曲がった事が嫌いで、聡明で公平なお母さん、 小学生と幼稚園児のかわいい息子が二人。 どこにでもある、普通の仲良し家族ですが… お母さんは、名探偵だったのです! ≪月夜の名探偵ツキヨさん☆≫ (登場人物走り書き) ●ご本のオバちゃん 月夜さんのリア友。 ●いのししさん …総務課勤務のベテラン市職員。 ●怪盗stm 最近何件か起きた事件現場に、“stm”と書かれたカードが必ず落ちていたため、こう呼ばれている。 訳のわからない物を盗んでは返却したり、妙な事をするのだが、いつも警察は後手後手。 何が目的なのか、さっぱりわからない。 第一話«月夜の名探偵ツキヨさん☆»☆ つゆの晴れ間の蒸し暑い日、ツキヨは市役所へ行くために、バス停に向かった。 バス停にはすでに7~8人並んでいたが、そのうち最後尾の、制服を着た男子高校生3人が、タバコを吸っていた。 みんな見て見ぬふりをしている。 ツキヨは、考えるより先に、3人に向かって言った。 「あんたらぁ、高校生やろ、たばこなんか吸ってええと思てんの!!肺がんになるで!」 「うっさいなぁおばはん!おばはんに関係ないやろ!!」 「あかんもんは、あかんねん!!!」 ツキヨが大きい声を出すと、高校生たちはちょっとビックリした様子で、 「こんなおばはん、ほっといて、行こかぁ・・・」 と、バス停から離れて行った。 「ツキヨさ~ん!勇気あるなあ~!!仕返しされたら、怖いから、よう言わんわ~!」 「わあ~ご本のオバちゃんさん、こんにちは!見てたんですかあ!はずかしいわあ・・・わたしでも、子連れのときは、よう言いませんよぉ!」 「バスなんかめずらしい、どこかおでかけですか?」 「あ、ちょっと、市役所に行くだけ・・・自転車パンクしてて・・・」 バス停に並んでいた人々は、ツキヨたちをチラチラ見ていたが、次第に自分の世界に戻っていった。 二人の人物を除いて……。 ★ バス停で、最後までツキヨを見ていた人物は、バスを降りると喫茶店に入った。 そして、愛用のノートパソコンを開けると、自分のブログを更新し始めた。 |6月×日 |さっきバス停で、高校生のタバコを注意するオバサンがいた。 |よくやるよ。 |普通言わないでしょう。 |みんな、見て見ぬふり。 |人間、自分が一番かわいいですから。 そこまで書いた人物は、ふと背後に人の気配を感じた。 だが、振り返っても、そこには誰もいなかった。 その夜、めったに訪れる人のいないそのブログに、初めての訪問客があった。 |はじめまして stmさん |私もその一件を、見ていました。 |なかなかできる事じゃありませんよね‥‥。 その日から、ブログの管理人stmは、その訪問者とメールを交わすようになった。 数日後、そのブログは閉鎖され、次第に“stm”は、検索にかからないようになっていった…。 ☆ それから十数日後、市民吹奏楽団の練習のあと、指揮者が使うタクトが無くなっている事に、なつばてコナンが気がついた。 それを聞いて、keiの驚いて調子をはずした声が、楽器の保管室に響いた。 「無いんですか?本当に?…前の指揮者の先生からいただいた、大切なタクトでしたのに…!」 タクトが入っていたはずの空のケースを持ったまま、なつばてコナンが答えた。 「keiさん、きのうは練習を一般公開しましたから、きっと誰かがふざけて…」 keiの声を聞きつけて、高校生のkinnも、会話に加わった。 「あれれー?でも、なつばてさん、そのタクト…練習の最後にはちゃんとありませんでしたっけ?」 「ああ、kinn君、それが…どうも、ケースだけだったみたいなんだよ…」 「そうだったんですか…」 3人は押し黙り、思わず、自分の楽器のケースをしっかりと抱え込んだ。 タクトは翌日、市役所正面玄関の植え込みの端に、突き刺してあるのが発見された。 そして、そばに、“stm”とだけ書かれた名刺大の紙が、飛ばないよう石をのせて、静かに置いてあった。 その夜、ツキヨの元に、ワオ市長から一通の呼び出しメールが届いた。 胡難市を舞台に起こった、奇妙な連続盗難事件の、幕開けである。 第二話「イチロウ~~!遅刻するで!お母さん、ジロウを幼稚園に送ってから、市役所へ行かなあかんやから、早く行きなさいよ~!」夕べ、ワオ市長から呼出メールをもらい、ツキヨは朝イチで市長室に向かう事になっていた。 「まてよまてよ…お母さん、幼稚園に持って行く水筒は、どこぉ!」 「あ…ゴメン!」 バタバタバタバタ…… 「行ってきまーーーーすっ!!」 バターーーン!! 「……お兄ちゃんの手提げバッグあるでぇ、また、おにいちゃん、忘れたんちゃう?お母さん…」 ☆ 「市役所に行くのは、これでいいんですか?」 ツキヨがバス停に並んだとたん、誰かに声をかけられた。 「あ、ハイ、そうですよ。」 振り返ると、一人の中年女性が立っていた。 「ありがとうございます。 …お子さん、小学生ですか?」 「えっ?」 「手提げ…」 「あっ!ついでに小学校に届けようと思っていたのに、忘れてたわー!」 「ウチにも小学生がいるんですよー!お近くですよね? 私はQきちと申します。どうぞよろしく~!」 ツキヨは、ずいぶんなれなれしい人だなぁと思ったが、 「月夜です。こちらこそ、よろしくお願いします。」 …と言ったところで、バスが来た。 ☆ 市役所に着いたツキヨは、すぐに市長室に向かった。 市長室の手前の秘書室で、マム@NY秘書室長と、aniki調査室長が、ツキヨを出迎えてくれた。 「ツキヨさん、先月の事件は、ツキヨさんが解決されたんだそうですね!…あとでこっそりanikiさんにうかがって、私、ツキヨさんの大ファンになっちゃいました!」 マム@NYは、いたずらっぽく笑った。 ツキヨが市長の命を受けて調査している事は、市役所内でもトップシークレットであり、市長とツキヨと、aniki調査室長しか知らないはずだった。 ツキヨはaniki室長に、“マムさんに知られても大丈夫なの?”と、目で聞いた。 「ツキヨさんが見事に事件を解決されたのを誰かに言いたくなってしまって…済んだ事なのでマムさんならいいかなと思っちゃいまして…」 頭をかくaniki室長を見てツキヨは、ふっと顔を和ませた。 そして、この有能な市長の両腕コンビに向かって微笑んだ。 「マムさん、ありがとうございます。さぁ、anikiさん、忙しい市長のところに行きましょうか?」 マム@NYは秘書室に残り、anikiはあわてて市長室のドアをノックして、ツキヨと共に、市長室に入った。 ツキヨは1ヵ月ぶりに、大好きな後輩でもある胡難市の市長、ワオと顔を合わせた。 「ツキヨ先輩、先月の事件では、大変お世話になりました。…で、また妙な事が起こりまして…お力を貸していただきたいのですが…」 礼儀正しいワオ市長は、胡難ピアノ教室の先輩であるツキヨに、いまだに敬語を使ってくれる。 「まぁ、なんでしょう?私にできる事でしたら…」 ワオ市長は、控えていたaniki室長を呼び、市民吹奏楽団のタクト盗難事件と発見の顛末を、ツキヨに説明するよう命じた。 「まぁ…そんな事が…」 ツキヨが驚くと、ワオ市長は、困ったような顔で付け足した。 「警察は、イタズラでしょうと、本腰を入れてくれないんです。 でも、市役所に何かうらみがある人の犯行かもしれないので、ちょっと調査してほしいんです。」 「わかりました。やってみます。」 「先輩、気をつけてくださいね…」 ツキヨは、市長でもある後輩に向かって微笑むと、aniki室長と2、3打ち合わせをして、市役所をあとにした。 ☆ タクトが発見された事は、すぐに市民吹奏楽団員にも知らされることとなった。 そこで、胡難高校では、市民吹奏楽団員のkinnを中心に、タクトが発見された時、かたわらにあったというカードに記されていた、“stm”の意味について、みんなで考え始めた。 ☆↓平葉陽蘭さんの原稿です☆ kinnは、タクトの一件を仲の良い平葉陽蘭とつちのこに話した。 「それって一体何のために? それにstmって?」 つちのこがkinnに聞いた。 「詳しいことはまだわかってないんだ」 「そっか、ATMならわかるんだけど」 つちのこがそう言うと…… 「stmとATM、似てるよね。僕、そういうの好きだな」 kinnはちょっと笑って言った。それに対し、平葉陽蘭は…… 「でも、あながち間違いじゃないと思うよ。そのstmって何かの略じゃない?」 と言った。するとkinnがひらめいたように言った。 「ちょっとひらめいたんだけどさ。stmって、『市民吹奏楽団の』『タクトを』『もらいました』とかじゃない?それぞれの頭文字がstmになるし」 「kinn君、上手~。それ、なんとかスティックって言うんだよね? 何だったっ け?」 つちのこがそう言うと、平葉陽蘭が答えた。 「アクロスティックだと思うよ。でもよく思いついたね、kinn君。まぁ、意味はともかく、この事件まだ続くんじゃないかな? タクトに何かついてるとは思えないし」 「じゃあ偶然か。僕のだとあれで終わりになるもんな」 「わかった、タクトが欲しかったんじゃなくって始まりの合図だったってこと?市役所に置いたのは、市長への挑戦状だったりして」 とつちのこが言った。 「まぁ、そういう可能性もあるってことで。また何か進展があったら教えてね、kinn君」 「お願いね、kinn君」 と平葉陽蘭とつちのこが言った。2人ともこの事件が気になるようだ。 「うん、また何かあったら教えるよ。」 ☆↑平葉陽蘭さん、ありがとうございました☆ また、胡難大学でも、同じく市民吹奏楽団員のなつばてコナンを中心に、“stm”の意味について、3ヶ国の人々が話し合っていた。 ☆↓ルルさんの原稿です☆ ルル;何でタクトなんて盗んだんだろ? カラス;ふざけてやったにしては度がすぎますね。 優希;楽団で大切にされてることを知ってて....かも。 ルル;タチ悪いね! 宮野;でも楽器じゃなくて良かったです。 なつばてコナン;いや、この先盗みにくる可能性もあるから怖いけどね....。 ルル;っていうか、せっかく盗んだ物を返すなんて、盗むのを楽しんでるだけなんじゃないの? 優希;何か意味がある行動なのかな。 宮野;あと“stm”は何? カラス;日本人がよく使う略語? ルル;あ~“KY”で「空気読めない」とか! 宮野;何でも略しますね。 なつばてコナン;ス..サ..“P&A”なら「パンダ」なのにな。 全員;うーん.... 優希;その怪盗さんの名前じゃない? なつばてコナン;あぁ、ちょうど書かれてた紙は名刺サイズだったみたいだしね。 カラス;するとその人はずいぶん自己主張が激しいです。 優希;市役所にわざわざ置いたってことは、市とか市長に対するメッセージなのかな。 宮野;メッセジ!! カラス;とにかく、この街で何かが起こってることは確かですね。 なつばてコナン;何か....か。 ☆↑ルルさん、ありがとうございました☆ ☆ 街で“stm”がウワサになり始めた頃、第2の盗難事件が起きた。 人通りがあまり多くない地域にある、公民館の看板が盗まれ、1kmも離れた公園のすべり台の上で発見されたのだ。 そして、そのかたわらには、またもや“stm”と書かれた、謎めいたカードが置かれていた…。 登場人物・第一話・第二話 第三話~第六話前編へ 第六話後編へ 研究室ふたたびへ |